本の紹介

『保健室経由、かねやま本館。』

松素めぐり/作 おとないちあき/装画・挿画 (講談社)1400円+税 2020年6月1日初版

新潟から東京に引っ越してきたサーマの一家。新潟では人気者だったサーマは、東京でもうまくやっていけるつもりだったが、のけ者に。具合が悪くなって保健室に向かったところ、【第二保健室】に入り、山姥を思わせる養護教諭に導かれて床下の世界へ行くことに……。

怪しげな湯治場で出会うのは、それぞれ心に傷を負った中学生。

傷つけられて許せなくなる気持ちや、自分の嫌なところに向き合うつらさ。

どの子の気持ちもわかるわかる。

でも、湯につかっていると、かたくなっていた気持ちに少しずつ変化が起きていくのです。

つらさがわかるだけに、ほどけていく様子や信頼を強めていく様子にじんときて、何度も目が熱くなりました。

現実と非現実との行き来、解消されるものと、深まる謎。次巻の展開への引っぱりもうまい!

文学とエンタメの両方を合わせ持つ傑作です。

『赤毛証明』

光丘真理/作 (くもん出版)1300円+税 2020年5月30日初版

生徒手帳の1ページ真ん中に、赤いゴム印で「赤毛証明」と押されたことから、自分は「ふつうじゃない」と感じた主人公。

そこから、「ふつうってなんだ?」という疑問に向き合っていくようになります。

赤毛証明印を押した先生、車いすバスケット選手の幼なじみや友人、その家族と、いろいろな人の思いが交差するなかで、思考を深めていき……。

世の中には、これが「当たり前」と思わされていることがいかに多いか。

本書を読むと、幻影の「ふつう」に自分を当てはめている息苦しさに気づき、本当にこれは従うのが当たり前なんだろうかと、考えるきっかけになると思います。

そのままでいいんだよと、子どもたちを応援する物語です。

『よろしくパンダ広告社』

間部香代/作 三木謙次/絵 (学研プラス) 1400円+税 2019年6月11日初版

パンダによる動物たちのための広告社。

個性豊かなクリエイターを描いた、歴としたお仕事小説です。

広告制作の仕事がどういうものかがわかり、仕事に向き合うパンダの努力と友情、やりがいが伝わってきます。

なんといっても、言葉がすてき。

ダジャレやらキャッチコピーやら一行日記やら、言葉って、こんなにもおもしろくも、オシャレにも、はっとさせるものにもなるのだと、ほれぼれします。

おもしろくて、かわいくて、じんわりして、読み終わった後、元気をもらえる一冊です。